白山さんと黒い鞄

白山さんと黒い鞄 (電撃文庫)
クラスの隣の席の白山さんは内気で誰とも接点を作りたがらないおとなしい少女であるが、ある日、主人公は誰もいない図書館の資料室で巨大な鞄の中に上半身を突っ込み楽しそうに誰かと談笑している少女の姿を目撃してしまう。
実は鞄の中には異世界があり、そこから飛び出してきた異世界の住人を取り押さえるために戦う、という話。
あまり世界設定に深みが無く、何がどうなって鞄の中に世界ができたのかとか、白山さんはどんな能力があるのかなどが明らかにされず、展開に応じて新設定が出てくるので、話が薄い印象を受けます。どうせ続きものにするのであれば、ミスリードを誘うのでも良いのでもう少し風呂敷を広げるなり、深みを見せるなりしてほしかったところ。また作中に頭が良くて情報収集能力に長けた先輩というのが出てくるのだが、具体的に凄いところを見せずにただ周りの人物が凄い凄い言っているだけなので、凄さが伝わってこないばかりか、やや滑稽にも映ります。読み手が凄いなと思うようなエピソードの一つでも入れてほしかったです。あと外道なクラスメートが出てくるのですが、そいつらに対する制裁が足りないのもカタルシスを阻害しています。
白山さんのキャラクター性(内気で健気で一生懸命で照れ屋で……)で保っているところはありますが、彼女を守るために別行動をとったのにわざわざ戻ってきて足手まといになるとか、鬱陶しく感じてしまうところもあります。

総じて文句ばかり出てしまうのですが、読んでると結構楽しいです。
いろんなところのバランスが良いのかも。